Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
の久美子が現われたというわけなのでした。
蟹江の勤め先は、ある私立図書館です。彼はそこの貸出係りでした。古ぼけて小さな図書館ですから、入館者の数もすくない。したがって貸出係りも、しごく閑散な仕事でした。貸出台の向うに坐って、一時間のうち一度か二度立って書庫に入るだけで、あとはただじっとして居ればいいのです。蟹江はこの職場が気に入っていました。暇な時間がたくさんあって、しかも本が存分読めるからです。ただひとつの欠点は、月給が多くないということですが、仕事がらくなんだから、これは仕方がない話でしょう。書庫の万巻の蔵書がタダで読めることで、充分におぎないがつく。そう思って彼は諦めていたのですが、『すみれ』に久美子が現われて以来、単純に諦めてばかりはおれなくなった風です。久美子の顔を見るには、それ相当の飲み代が必要だという訳でした。
久美子は暖国の生れらしく、色のあさぐろい眼のぱっちりした女でした。顔立ちは面長で、多肉果実の種みたいにすべすべした肌をしています。しかも割に無口で、おとなしそうな感じなのでした。蟹江が久美子に好意を感じたのも、別れた先妻があまりおしゃべりでガラガラ女でしたから、反射的にそんな久美子に心が動いたのかも知れません。