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Japanische Klassiker mit Furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

ただ態度でもって、蟹江を圧迫しようとする気配があるようでした。つまり蟹江の目の前で、久美子にむかって、わざとらしい親しげな口をきいてみたり、蟹江が鰈の煮付けだけで我慢しているのに、刺身だの酢の物だのをどしどし注文したり、まあ大体そんなことです。一種の神経戦術みたいなやり方でした。

こういう具合ないきさつで、日が経つにつれ、蟹江がいらいらしたり不安になったりしてきたのも、その巧妙な戦術に引っかかったのかも知れません。

昼間、貸出台に坐っていても、久美子と猿沢のことを考えると、彼は急に胸がどきどきしたり、背筋がつめたくなってきたりするのです。あの小麦色の久美子の肉体を、すでに猿沢のやつがものにしたかも知れないぞ、などと思うと、わっと叫び出したくなってくる程なのです。だからなるべくそんなことを考えまいとして、貸出台にしがみついて、面白そうな小説本などを読み耽ってまぎらわそうとする。するとその小説が、近頃評判の新作家の姦通小説であったりして、とたんに久美子のことを思い出して、むしゃくしゃした気分になってしまう。

久美子にたいする控え目な慕情が、猿沢の出現以来、しゃにむにといった具合の熾烈な情熱に変化したのは、蟹江にとっても意外なほどでした。