Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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モスクワいんしょうき

モスクワ印象記

宮本 百合子

Lesen Sie モスクワ印象記 (モスクワいんしょうき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.941 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

大道商人も並んで、りんご籠の重みで胸をそらせながら、親しげに巡査に顔を向け喋り、笑い、行く。――暫く歩いた時、彼等の行手を遮るようにして横丁から一台空の荷橇が出て来た。それを見てりんご売は一歩巡査をやりすごしたと思うと、いきなりその橇馬の鼻面を掠め、重い林檎籠を腹の前に抱えたなり、よたくり而も極めて手際よく、あっち側の歩道の人ごみの間へにげ込んでしまった。巡査が振り返る、車道の空間には、おっことして行った味噌こしざるみたいなものと一緒にまだ彼の笑顔が残っている。もう、樺色外套の背中は見えない。――

自分は思わず笑った。これはロシア的だ。そして農民的だ。彼がうまくやったのが何だかユーモラスで、私はひとりでに笑えた。歩道に立ち止って見ていた者も笑っている。巡査は、別に追っかけようともせず、傷けられた表情もなくりんご売の逃げた方角を眺めていたが、両手はポケットに入れたまま、やがて四ツ角へ向って歩き去った。味噌こしみたいなものは、どこかの物売女が拾った。

ロープシンは自殺しなければならなかった。政治的見地からすれば彼自身、不幸な最後を予想しない訳ではなかったろう。