Japanische Klassiker mit Furigana
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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
Lesen Sie 三界万霊塔 (さんがいばんれいとう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.716 Zeichen · 39 Bildschirme
「お忘れはないでしょう。わたしコックスです」
「あ、コックス君」
愛想のよさに釣りこまれて思わず握手をしてしまったが、どこで逢った青年か思いだせない。見たような顔でもあり、そうでないようでもある。コックスのほうは深尾がおぼえているものときめこみ、長い脛を倒すようにして椅子に掛けると、まだ少年の悌のある優しい口元に微笑をうかべながら、勢いこんでしゃべりだした。
「わたくし、トオキヨオへ着くとともに、あなたの名前、友達に言いましたら、すぐ、わかりました。あなたが、こんな有名なひとになっているとは、わたくし考えておりませんでした」
「君はたいへん日本語がお上手だが、どこで習ったのかね」
「わたくし、ツラギのキャンプの隊長をしているとき、日本人に習いました」
ツラギ……畜生、あいつなんだ。対馬の伜から材料を貰い、マライタのゴタゴタを書いた「ポート・ダーヴィン・ジャアナル」の新聞記者だ。さっき戸田もいっていたが、あの記事にはたしかにマックスと署名してあった。
失敗ったと思うと、急に心が波立ち、顔色が変るのが自分にもわかった。
「神の如き一撃」とでもいうべきか。山崎と対馬の伜にたいする心の準備は完全無欠にやっておいたが、よもや、こんなやつがやってくるとは想像もしなかった。