Japanische Klassiker mit Furigana
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さんりょうきょう
三稜鏡
佐左木 俊郎
Lesen Sie 三稜鏡 (さんりょうきょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.347 Zeichen · 42 Bildschirme
「糞っ!」
博士は毒々しく吐棄てながら、次第に横の方へ不恰好に膨脹して行く無気味な両腕を、半狂乱になって切断するのであった。否! 半狂乱ではなく、次第に切断されながら次第に却って膨脹して行く胴体が博士を狂気にするのか、博士が既に発作的な狂人になっているから胴体を切り刻むのか兎に角、博士はもう本当の狂人になって了っているのであった。
私は動悸が激しくなり頭がぐらぐらして来て、何うしてももう、それを見ていることが出来なくなって来る。私は、博士が何か大声に呶鳴っているその研究室から、自分の部屋へと逃出して了うのであった。そして私は、頭の中に火の車が廻っているようなのを感じながら嘔吐をも催し、精も根も無くなって、寝台の上へどっと突伏して了うのであった。
博士の怖しい実験の後に、私は肉体的にも精神的にも、酷く衰弱して了って、幾日かの間はもう何もすることが出来なくなるのであった。そして肉体と精神との疲労の上に、更に憂鬱な厭世的なものが激しく襲いかかって来て、外科医術に対する私の希望を折取って了おうとするのであった。併し、博士の令嬢との間に沸立っている恍惚感が、矢張、何うしても未練になるのであった。