Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
Lesen Sie 三郎爺 (さぶろうじい) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.866 Zeichen · 50 Bildschirme
皆はもう、あっけに取られてしまった。おかしいのだか、驚いたのだか訳も分らずに剥(む)いた沢山の眼の前まで落ちて来ると、御愛嬌のように、もう一つポンと弾んで、オヤともアラともいう間もなく、どこへか消えてなくなってしまった。
その速いこと、速いこと。
まるで、目にも止まらぬ早業に、うつけのようになった三郎爺の母親は、どういう気持ちだったのか、
「はれまあ……俺(お)ら……」
と、がっかりした口調で囁くなり、ちょうど気抜けのように抱いていた三郎爺を、いやというほど地面へ落してしまった。
暫くは声も出せないで、ひきつけていた彼を、皆が驚いて抱きあげたときには可哀そうに、右の手が肩からブラブラに下ってしまっていた。
二
そのブラブラになってしまった手をどう療治したのか、彼も知らず、私もまた知らない。
大方、何かの草の根を煎じてむしたくらいのことほか、出来はしなかったのだろうけれども、そこは御方便なもので、余病も起さず、赤坊の軟い骨はどうにか納まって歩ける頃には、別に不自由もないほどになった。
けれども、よく見ると、右の手は左の方よりかなり短い。そして肩のところが、変に嵩(かさ)ばったようになっているくらいのことで済んだのは、何しろ仕合わせであった。