Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しがつばか

世相・競馬

織田 作之助

Lesen Sie 世相・競馬 (しがつばか) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.112 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

「一本だけ! 絶対に二本とは言わん。咽が乾いて困るんだ。脳味噌まで乾いてやがるんだ。恩に着るよ。たのむ! よし来たッといわんかね」

「だめ!」

「じゃ、十分だけ出してくれ、一寸外の空気を吸って来ると、書けるんだ。ものは相談だが、どうだ。十分! たった十分!」

「だめ! 出したら最後、東西南北行方知れずだからね、あんたは」

「あかんか」

大阪弁になっていた。

「あかん。今夜中に書いて貰わんと、雑誌が出んですからね。あんたの原稿だけなんだ」

「火野はまだだろう?」

「いや、今着きましたよ」

「丹羽君は……?」

「K君がとって来た。百枚ですよ」

「じゃ、僕のは無くてもいけるだろう。来月にのばしちゃえよ」

「だめ! あんたが書くまで、僕は帰らんからね」

「泊り込みか。ざまア見ろ」

Aさんは笑いながら出て行った。

「書きゃいいんだろう、書きゃア」

武田さんはAさんの背中へ毒づいていたが、やがて机の上にうつ伏したかと思うと、鼾をかき出した。

死んだような寝顔だったが、獣のような鼾だった。

ところが、半時間ばかりたつと、武田さんははっと眼を覚して、きょとんとしていたが、やがて何思ったのか、白紙のままの原稿用紙を二十枚ばかり封筒に入れると、