Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
うしろざまに階段へ一足かけたお藤の姿は、作りつけのように動かなかった。
風のごとく表から飛びこんで来たお藤が、風のごとく裏へ吹き抜けて行ってからまもなく。
お艶と弥生、あっけにとられた顔を見合わせているところへ、先刻お藤をかぎつけた御用聞きをさきに数人の捕吏がどやどやとなだれこんできて、
「いま、ここへ女がはいって来たろう?」
と威猛高だ。
すばやく眼を交わした弥生お艶、何がなしに同じ意を汲みあって、まるで約束していたように等しくとぼけた。
「いいえ、どなたも……」
「はてな?」
と多勢が首を傾けたからさては踏みあがってくるかな? と見ていると、それでは他家だったかも知れないと一同急いで出て行った。
露地から屋根まで御用提灯でいっぱいで、めざす女を逃がした役人達がくやしそうになおも右往左往している。時ならぬ雨中の騒ぎに長屋の者も軒並みに起き出たようす。
「張りこみに手落ちがねえから、どっかでひっかかりやしたろう」
どぶ板を踏み鳴らしながら、話し過ぎる岡っ引きの高声……お艶と弥生は、たがいに探るように瞳の奥を見つめていたが、筒抜けていったお藤については、ふたりとも何も言わずに、そのうちに戸外の物音もしずまりかけると、羊のように怖じすくんでいたふたりの心もゆるんで、お艶、弥生、はじめて若い女らしく笑いあった。