Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme

Aozora Bunko

夢? ほんとにほんとに夢。ながい夢! 泣きはらした眼を部屋へ返したお艶は、栄三郎の羽織がぬぎすててあるのを見ると、はっとして立ちあがった。

まあ! お羽織なしにこの寒ぞらへ!

もしや風邪でも召されては!

と思うとお艶、装ふりかまっていられる場合ではない。ずっこけた帯のはしをちょいとはさむが早いか、泣き濡れた顔もそのままに羽織を小わきに家を走り出た。

羽織をかかえて露地ぐちまで走り出てみたけれど、どっちへ行ったものか、栄三郎のすがたはもうそこらになかった。

ひっそりとした往来のむこうを荷を積んだ馬の列が通り過ぎていった。

しめっぼい冷たい空気が、町ぜんたいを押しつけている。

ぼんやりたたずんでいるお艶へ、

「小母ちゃん、そのおべべを持ってどこイ行くの?」

と長屋の子供が声をかけたが、お艶は耳にもはいらぬふうだった。

「やあ! 小母ちゃんが泣いてらあ! 泣いてらあ! やあい、おかちいなあ!」

急に足もとから子供がはやしたてたので、お艶はハッとわれに返って羽織に顔を押し当てた。

「坊や、いい児だね。おばちゃんは泣いてなんかいないからね。さ、あっちへ行ってお遊び」