Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
早春の夜のそぞろ歩き。
とは言うものの、五百石旗本の身で五十両の金子につまっている源十郎としては、風流心どころかいっさい夢中、とやこうと思い悩みながら、やみくもに歩をひろっているのだった。
花町の角を曲がって、竪川にかかる三つ目の橋。
それを渡って徳右衛門町から五間堀へと、糸に引かれるようにフラフラと深川の地へはいっていった。
抜けるように白いお艶の顔と、山吹いろの小判とがかわるがわる幻のように眼前にちらつく。
おさよ婆を死んだ母御にそっくりだなどと敬っておくのも、源十郎としては、いわば将を射る先にまず馬を射る戦法――やっとのことでそのおさよを手に入れ、ここに五十両の金さえあれば、それを縁切りにおさよを通しておおぴらに栄三郎からお艶を申し受けることができるところまで漕ぎつけながら、こうしてその金員の調達にはたと差しつかえているとは、宝の山に入りつつ手を空しゅうするようなものと、源十郎、思えば思うほどわれながらふがいなく、身内の焼けるような焦燥の念に駆られざるを得なかった。
左膳の刀争いなぞ、もはや彼の思慮のいずくにもない。
あるのはただ、金のみ、五十両! 五十……。