Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
源十郎だ。
「あれ! ごめん下さいまし」
そのまま内股に駈けてゆくお艶のうしろ姿に、源十郎の眼がじいっと焼きついたと見ると、
「殿様、あれが浅草名代の当り矢のお艶でございますよ――まあきれいですことねえ!」
そそのかすようにお藤がささやいた。
褄を乱して急ぎ去るお艶の影に、みだらな笑をたたえた源十郎は「お藤」とふり向いて、
「美い女だなあ! 当り矢のお艶という? ふうむ、そうか」
お藤は、いたずららしい眼で源十郎を叱った。
「あれさ、殿さまいけませんよ。またそろそろ浮気の虫が……」
苦笑した源十郎、五十両を持った若侍をつけてきたのは、かれの腰にある陣太刀づくりの脇差――坤竜丸にひかれてのことである。いまは茶屋女の裾さばきに見惚れている場合でないと、そっとお藤を押しのけて前の茶屋を見やると――。
葦簾のかげに緋毛氈敷いた腰かけが並んで、茶碗に土瓶、小暗い隅には磨きあげた薬罐が光り、菓子の塗り箱が二つ三つそこらに出ている――ありきたりの水茶屋のしつらえ。
むこう向きにかけた侍ひとり。その羽織の下からのぞいている平巻きの鞘を見つけると、源十郎は忍びになって、常夜燈のかげへお藤をさし招いた。