Japanische Klassiker mit Furigana
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Lesen Sie 丹下左膳 (たんげさぜん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 340.187 Zeichen · 666 Bildschirme
その一艘の胴の間に、うるさい世をのがれてきた若い男女。
当り矢の店をしまうとすぐ、お艶と栄三郎は、灯のつきそめた町々をあてどもなくさまよって、知らず識らず暗いところを選ぶうちにここまで来たのだった……そして舟のなかへ。
話さなければならぬことが山ほどある。
が、ただそんな気がするだけで、膝のうえにお艶の手をとった栄三郎、もう何もいわなくてもよかった。
川向うは、本所の空。
火の見やぐらの肩に星がまたたいて加納遠江や松浦豊後守の屋敷屋敷の洩れ灯が水に流れ、お竹ぐらの杉がこんもりと……。
人目はない。
お艶の胸のときめきが握られた手を通じて栄三郎に伝わると、かれは睡蓮のようなほの白い顔をのぞきこんだ。
「もう夜寒の冬も近い。こうしていては冷えよう――」
いいながら羽織をぬいで、お艶の背へ着せようとする。
「え、いいえ、あれ! もったいない……それではかえってあなた様が……」
とお艶は軽く争ったが男の羽織が、ふわりと肩に落ちると同時にされるがままにもたれてくるのを、栄三郎はかき抱くように引きよせて、
「お艶」
「若殿さま」
眼と眼。
顔と顔。
四つの目からはずむ輝きが火のようにかちあう。