Japanische Klassiker mit Furigana
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のりあいじどうしゃ
乗合自動車
川田 功
Lesen Sie 乗合自動車 (のりあいじどうしゃ) von 川田 功 (かわだいさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.957 Zeichen · 8 Bildschirme
優しくして居てこそ女なんだ。こんな奴は社会の為めにならない」
と、捨鉢になって彼も勝手な理窟を考えた。五六十円と睨んだ彼女の懐中は既う自分の様に思えだした。次の停留場に来ると満員の上へ更に二三人加わって、今度は単独に蹣跚る余地さえ無くなって了った。と同時に、これが為彼女は方向が自然と変って彼に背を向ける事になった。
「しまった。手が届かなくなった」彼は考えた。「でも慌てる事はない。どうせ此女だって下車する時はある」
だが彼は妙に気が急いた。無理をしまいと思うと猶更焦々した。時々箕島刑事の方に横眼を流して見ると、それとなく此方を警戒して居る風があった。彼は婦人の隣に杖を持った男が居るのを発見した。杖の手柄は犬の顔になって口を尖らせて居た。彼はそれに躯を投げ掛けて、杖の柄の尖った鼻で婦人のお尻の所へ突掛けた。計略は見事に成功した。
「おお痛い」
婦人は又しても大業に我儘らしい声を立てて、何か文句でも云う積りか、無理矢理に躯を回転して此方へ向いた。彼女は杖の所有主の中年の紳士を睨め付けたが、対手は一向知らん顔で澄して居た。女の怨めし気な表情は堪らなく彼を嬉しがらせた。