Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme

Aozora Bunko

――尾野さんは、遠慮のない家の中の気分に感染して、笑いながら先に蒲団を被った。木下と信子とは、そして時々啓介とは、低い声で途切れ勝ちに種々な話をした。これと云って内容の無い、またそれだけに却って親しい気分の籠った話であった。

何の花が一番好きかということで、木下と信子とは議論をした。信子は百合の花が一番好きだと云った。木下は仙人掌の花が一番好きだと云った。仙人掌の花なんか可笑しくって馬鹿げてる、と信子は云った。百合の花は陳腐で月並だ、と木下は云った。然し百合の花には気品があっていい香りまである、と信子は云った。仙人掌の花はより崇高な気品とより多く余韻のある香りとを持っている、と木下は云った。第一仙人掌そのものが木だか草だか得体の知れない変なものだ、と信子は云った。仙人掌は球形であって、球形は最も円満なものの象徴だ、と木下は云った。それならば百合の根だって円っこい、と信子は云った。然し百合の根は多くの片鱗が集って円いのであって、全体が渾一した球形の仙人掌とは比較にならない、と木下は云った。でも刺があるのは本当に円満でない証拠だ、と信子は云った。円満なものにも自身を保護する権利はある、悪を近づけないためには刺が必要だ、と木下は云った。