Japanische Klassiker mit Furigana
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にひゃくとおか
二百十日
Lesen Sie 二百十日 (にひゃくとおか) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.466 Zeichen · 60 Bildschirme
ひゅうひゅうと絶間なく吹き卸ろす風は、吹くたびに、黒い夜を遠い国から持ってくる。刻々と逼る暮色のなかに、嵐は卍に吹きすさむ。噴火孔から吹き出す幾万斛の煙りは卍のなかに万遍なく捲き込まれて、嵐の世界を尽くして、どす黒く漲り渡る。
「おい。いるか」
「いる。何か考えついたかい」
「いいや。山の模様はどうだい」
「だんだん荒れるばかりだよ」
「今日は何日だっけかね」
「今日は九月二日さ」
「ことによると二百十日かも知れないね」
会話はまた切れる。二百十日の風と雨と煙りは満目の草を埋め尽くして、一丁先は靡く姿さえ、判然と見えぬようになった。
「もう日が暮れるよ。おい。いるかい」
谷の中の人は二百十日の風に吹き浚われたものか、うんとも、すんとも返事がない。阿蘇の御山は割れるばかりにごううと鳴る。
碌さんは青くなって、また草の上へ棒のように腹這になった。
「おおおい。おらんのか」
「おおおい。こっちだ」
薄暗い谷底を半町ばかり登った所に、ぼんやりと白い者が動いている。手招きをしているらしい。
「なぜ、そんな所へ行ったんだああ」
「ここから上がるんだああ」
「上がれるのかああ」
「上がれるから、早く来おおい」