Japanische Klassiker mit Furigana
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にとうしゃにのるおとこ
二等車に乗る男
豊島 与志雄
Lesen Sie 二等車に乗る男 (にとうしゃにのるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.342 Zeichen · 13 Bildschirme
どうにも仕方がありません。
それから私は、一人汽車の窓にもたれて、消え去った彼女の面影を思い浮べました。僅か一年ばかりのうちに、驚くほど伸び伸びと生長して……と云っちゃ変ですが、凉しい眼付や引緊った口元に、何とも云えない溌剌とした魅力が籠っていて、一人前の立派な女です。今もしその前に、あの原稿をつきつけてやったら、彼女は何と云うだろう……そんなことを……笑わないで下さい……私はいろいろ空想に耽って、一人で微笑んでいました。
その空想からさめた時、汽車はもう新橋まで来てしまっていました。私は汽車から降りました。東京駅までだったのですが、空想からさめた咄嗟の考えで、彼女の電車を待つことにしたです。
その電車がなかなか来ませんでした。そしてさんざん待ちあぐんだ後、漸く電車が来て、胸を躍らせながら、赤切符もかまわずに、二等車に乗り込んでみると、もう彼女の姿はどこにも見当りません。私は馬鹿だったのです。大森か品川あたりで乗換えればよかったのです。それを下らない空想に耽ったばかりに、大事な機会を遁してしまいました。
それ以来私は、東京桜木町間の電車には、どんなに懐の淋しい折でも、必ず二等に乗ることにしています。