Japanische Klassiker mit Furigana
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にとうしゃにのるおとこ
二等車に乗る男
豊島 与志雄
Lesen Sie 二等車に乗る男 (にとうしゃにのるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.342 Zeichen · 13 Bildschirme
それが初めての長篇なものですから、どうもうまく書けなくて、殆んど毎夜の習慣のようになっていました。その上夜遅く、あたりが寝静ってる中に、一人で室の中を歩き廻ることは、何とも云えない気持なものです。昼と夜との違いはありますが、動物園の虎が檻の中をぐるぐる歩いてる気持に、私はよく同感が出来る気がします。私もよそから見たら、その虎と同じだったに違いありません。
そういうわけで、私は小説を読んでぎくりとして、一体作者は誰だろうかと物色してみました。第一は窓、次に窓の見える縁側、次に女文字、その三つを集めて考えてみると、通りを挾んだ向うの家の娘に違いありません。
ところが、その小説を受取った時には、その向う側の家には、四十年配の夫婦者と十二三歳以下の子供達と女中きりなんです。而も一週間ばかり前に越してきたのです。そしてその前には、四五ヶ月ばかり、浜野という会社員が住んでいまして、そこにハイカラな娘が一人いました。
小説を書いてよこしたのは、その浜野の娘だと私は察しました。そこで私は、この処置を一体どうしたらよいものかと、考えあぐみました。ピストルの件は拵えものにしろ、私が夜更けた室の中をぐるぐる歩き廻ったのが、彼女に何か悪い印象を与えたことは事実に違いありません。