Japanische Klassiker mit Furigana
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『いぶせますじせんしゅう』こうき
『井伏鱒二選集』後記
Lesen Sie 『井伏鱒二選集』後記 (『いぶせますじせんしゅう』こうき) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.132 Zeichen · 20 Bildschirme
私は、第一巻のあとがきにも書いておいたように、井伏さんとはあまりにも近くまた永いつきあいなので、いま改って批評など、てれくさくて、とても出来やしないが、しかし、井伏さんの同輩の人たちから、井伏さんの小説に就いての、いろいろまちまちの論を、酒の座などで聞いたことはある。
「井伏の小説は、井伏の将棋と同じだ。槍を歩のように一つずつ進める。」
「井伏の小説は、決して攻めない。巻き込む。吸い込む。遠心力よりも求心力が強い。」
「井伏の小説は、泣かせない。読者が泣こうとすると、ふっと切る。」
「井伏の小説は、実に、逃げ足が早い。」
また、或る人は、ご叮嚀にも、モンテーニュのエッセエの「古人の吝嗇に就いて」という章を私に見せて、これが井伏の小説の本質だなどと言った。すなわち、
「アフリカに於ける羅馬軍の大将アッチリウス・レグルスは、カルタゴ人に打ち勝って光栄の真中にあったのに、本国に書を送って、全体で僅か七アルペントばかりにしかならぬ自分の地処の管理を頼んでおいた小作人が、農具を奪って遁走したことを訴え、且つ、妻子が困っているといけないから帰国してその始末を致したいと、暇を乞うた。