Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとでなしのこい

人でなしの恋

江戸川 乱歩

Lesen Sie 人でなしの恋 (ひとでなしのこい) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.245 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

いて、やっぱり上の話声に聞き耳を立てないではいられなかったのでございます。

「この様なおう瀬を続けていては、あたし、あなたの奥様にすみませんわね」

細々とした女の声は、それが余りに低いために、殆ど聞き取れぬほどでありましたが、聞えぬ所は想像で補って、やっと意味を取ることが出来たのでございます。声の調子で察しますと、女は私よりは三つ四つ年かさで、しかし私の様にこんな太っちょうではなく、ほっそりとした、丁度泉鏡花さんの小説に出て来る様な、夢の様に美しい方に違いないのでございます。

「私もそれを思わぬではないが」と、門野の声がいうのでございます「いつもいって聞かせる通り私はもう出来るだけのことをして、あの京子を愛しようと努めたのだけれど、悲しいことには、それがやっぱり駄目なのだ。若い時から馴染を重ねたお前のことが、どう思い返しても、思い返しても、私にはあきらめ兼ねるのだ。京子にはお詫のしようもないほど済まぬことだけれど、済まない済まないと思いながら、やっぱり、私はこうして、夜毎にお前の顔を見ないではいられぬのだ。どうか私の切ない心の内を察しておくれ」

門野の声ははっきりと、妙に切口上に、せりふめいて、私の心に食い入る様に響いて来るのでございます。