Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

だんだんケティは眩暈のようなものを感じてきた。すうっと、目のまえのものが遠退いたと思うと、ケティはそれなりぐたりと倒れた。

気がつくと、瑜伽、秘密修験の大密画のある、うつくしい部屋に臥かされていた。黄色い絹の天蓋に、和の絨緞。一見して、活仏の部屋であるのが分る。すると、西蔵靴をかたりかたりとさせながら、活仏の影がすうっと流れてくる。むくんだ、銅光りのする顔がちょっと覗いたが、それはやがてひれ伏した。

「生き観音、おう、まことの観音とは貴女さまじゃ。毘沙門天の富、聖天の愉楽を、おう、われに与えたまえ」

ケティには、なんでそういわれたのか、考える頭脳はない。常人でも、それはじつに解しがたいことだ。しかし彼女は、それを機会にてんで無口になった。それまでの、のへのへと笑み妄言を言うケティは、もう何処かへ消えてしまったのだ。ただ、「天母生上の雲湖」を覆う密雲をのぞんでは、時々、きらっと光っては消える大氷河のかがやきに……そのときの笑みはてんで違うものになっていた。彼女は、なにかの叫び声をうけはじめたのだ。

「ケティは、何処にいるね」ダネックがちょっと意気込んだ声で折竹に訊いたが、相手の様子をみるといきなり言い紛わせ、「いやね、大氷河のしたのAF点の傾斜を測りたいんだ。