Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんレコード
人間レコード
夢野 久作
Lesen Sie 人間レコード (にんげんレコード) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.936 Zeichen · 20 Bildschirme
「ウン。仕方がない。こっちへ来い」
「モウ小郡に着きますよ」
「構うものか。五分間停車ぐらい‥‥」
二人はそのまま以前の特別貸切室に這入った。内側からガッチリと掛金をかけると、青年ボーイがポケットから注射器を出して、無色透明の液を一筒、寝台の上の老人の腕に消毒も何もしないまま注射した。
老人はモウ全くの死人同様になっていた。全身がグタグタになって、半分開いた瞼の中から覗いている青い瞳が硝子のように光り、ゲッソリと凹んだ両頬の間にポカンと開いた唇と、そこから剥き出された義歯がカラカラにカラビ付いて、さながらに木乃伊の出来たてのような気味の悪い感じをあらわしていた。
それから少年ボーイは枕元の豆電燈の球を抜いて、代りに白い六角の角砂糖ぐらいの小さなマイクロフォンを捻じ込んだ。そのまま二人は真暗になった車室のクッションに腰を卸して耳を澄ましていた。
列車の速力がダンダン緩くなって来て、蒼白いのや黄色いのや、色々の光線が窓硝子を匐い辷った。やがて窓の外を大きな声が、
「小郡イ――イ。オゴオリイ――イ」
と怒鳴って行った。
青年ボーイが身動きしないまま傍の少年ボーイに囁いた。