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Japanische Klassiker mit Furigana

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せんにん

仙人

芥川 竜之介

Lesen Sie 仙人 (せんにん) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.350 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

そう云う時には、ほかに仕方もないから、うす暗い客舎の片すみで、鼠を相手に退屈をまぎらせながら、いつもなら慌しい日の暮を、待ちかねるようにして、暮してしまう。鼠の数は、皆で、五匹で、それに李の父の名と母の名と妻の名と、それから行方の知れない二人の子の名とがつけてある。それが、嚢の口から順々に這い出して火の気のない部屋の中を、寒そうにおずおず歩いたり、履の先から膝の上へ、あぶない軽業をして這い上りながら、南豆玉のような黒い眼で、じっと、主人の顔を見つめたりすると、世故のつらさに馴れている李小二でも、さすがに時々は涙が出る。が、それは、文字通り時々で、どちらかと云えば、明日の暮しを考える屈託と、そう云う屈託を抑圧しようとする、あてどのない不愉快な感情とに心を奪われて、いじらしい鼠の姿も眼にはいらない事が多い。

その上、この頃は、年の加減と、体の具合が悪いのとで、余計、商売に身が入らない。節廻しの長い所を唱うと、息が切れる。喉も昔のようには、冴えなくなった。この分では、いつ、どんな事が起らないとも限らない。――こう云う不安は、丁度、北支那の冬のように、このみじめな見世物師の心から、一切の日光と空気とを遮断して、しまいには、人並に生きてゆこうと云う気さえ、未練未釈なく枯らしてしまう。