Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のびじたく

伸び支度

島崎 藤村

Lesen Sie 伸び支度 (のびじたく) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.120 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

子供は袖子の方へ来ないで、お初の方へばかり行った。

「ちゃあちゃん。」

「はあい――金之助さん。」

お初と子供は、袖子の前で、こんな言葉をかわしていた。子供から呼びかけられるたびに、お初は「まあ、可愛い」という様子をして、同じことを何度も何度も繰り返した。

「ちゃあちゃん。」

「はあい――金之助さん。」

「ちゃあちゃん。」

「はあい――金之助さん。」

あまりお初の声が高かったので、そこへ袖子の父さんが笑顔を見せた。

「えらい騒ぎだなあ。俺は自分の部屋で聞いていたが、まるで、お前達のは掛け合いじゃないか。」

「旦那さん。」とお初は自分でもおかしいように笑って、やがて袖子と金之助さんの顔を見くらべながら、「こんなに金之助さんは私にばかりついてしまって……袖子さんと金之助さんとは、今日は喧嘩です。」

この「喧嘩」が父さんを笑わせた。

袖子は手持ち無沙汰で、お初の側を離れないでいる子供の顔を見まもった。女にもしてみたいほどの色の白い児で、優しい眉、すこし開いた脣、短いうぶ毛のままの髪、子供らしいおでこ――すべて愛らしかった。何となく袖子にむかってすねているような無邪気さは、一層その子供らしい様子を愛らしく見せた。