Japanische Klassiker mit Furigana
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のびじたく
伸び支度
島崎 藤村
Lesen Sie 伸び支度 (のびじたく) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.120 Zeichen · 13 Bildschirme
「ちゃあちゃん。」
それが茶の間へ袖子を探しに行く時の子供の声だ。
「ちゃあちゃん。」
それがまた台所で働いているお初を探す時の子供の声でもあるのだ。金之助さんは、まだよちよちしたおぼつかない足許で、茶の間と台所の間を往ったり来たりして、袖子やお初の肩につかまったり、二人の裾にまといついたりして戯れた。
三月の雪が綿のように町へ来て、一晩のうちに見事に溶けてゆく頃には、袖子の家ではもう光子さんを呼ぶ声が起こらなかった。それが「金之助さん、金之助さん」に変わった。
「袖子さん、どうしてお遊びにならないんですか。わたしをお忘れになったんですか。」
近所の家の二階の窓から、光子さんの声が聞こえていた。そのませた、小娘らしい声は、春先の町の空気に高く響けて聞こえていた。ちょうど袖子はある高等女学校への受験の準備にいそがしい頃で、遅くなって今までの学校から帰って来た時に、その光子さんの声を聞いた。彼女は別に悪い顔もせず、ただそれを聞き流したままで家へ戻ってみると、茶の間の障子のわきにはお初が針仕事しながら金之助さんを遊ばせていた。
どうしたはずみからか、その日、袖子は金之助さんを怒らしてしまった。