Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme

Aozora Bunko

四

四

「湯小屋へいくか」

杢助は呟いた。

「小屋が出来たとすれば、どんな小屋かも知れねえが、うう、いってみるか」

こう呟いたとき、ふいと、死んだ親たちのことが頭にうかんだ。父も母もずっとまえに死んでいた、母親は杢助が出奔してから一年ばかり経って死んだそうである。黒門に申し訳がないという気持で、ほんのかりそめの病気をこじらしたのであった。父親は妻のあとを娶らなかった。ちょっとぼけたようになって、男やもめのまま十五六年も暮してから、死んだ。

「ひとついってみるか、三つ沢へよ」

父がぼけたようになったのは母に死なれたからであるし、母が死んだのは黒門のことを気に病んだためであった。そして、今もまた黒門では彼に来いという、いまのお登女さまは四十年まえのお登女さまではなかった。まえのお登女さまは杢助が出奔したあと、四五年していまのお登女さまを産んだ。もちろん父親は(代々がそうであったように)不明であるが、そのお登女さまも今ではおふくろさまと同じ年頃になっていた。

「そうだ、湯小屋へいくべえ」

杢助はまた呟いた。

「久しく涌き湯へもへえらなかったでよ、ほんに、明日にでもいくとすべえ」