Japanische Klassiker mit Furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme
そのとき飯篠老人の手が動かなくなり、なにか云いたそうに口をもぐもぐさせた。言葉が前歯のところまで出て、そこで歯にひっかかったようであった。
「ではまだ遠くもゆかれまい、これからすぐにお跡を慕ってまいろう」
若侍は自分に向って云った。
「道の奥をきわめるためにはいかなる辛苦もいとわぬ、否、いとってはならぬ、たとえ大地のさいはてであろうとも、必ず追いついて御伝授を受けなければならぬ、そうだ」
若侍はふるい立って、大先生がどちらへゆかれたかと訊ねた。杢助は知らないと答えた。大先生もこんどは、ゆき先を感づかれるようなへまはしないだろう、と答えた。若侍は気にかけなかった、彼は鉄石心をふるい起こしたようであった。彼は寸時もこうしてはいられないといったように、ずしんずしんと、力いっぱい地面を踏みつけながら去っていった。
「わしは」
やがて飯篠老人が云った。
「わしは、道の良心が咎める、わしはこの道の神の罰が怖ろしい」
「呼び返すかね」
「あの男はどこまでもわしを捜し歩くだろう」
「呼べば聞えるだよ」
「草に寝、石を枕にし、山々谷々、悪獣毒蛇をものともせず、ただ剣の道の秘奥をさぐるために、わしを求めて遍歴するだろう」