Japanische Klassiker mit Furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme
こと。もうひとつ、数多い修業者のなかにはときに、太刀筋を教えてくれ、とせがむ者がある。そういう者が来たときのために、といって、前庭の巨きな榧の樹の枝に、飯篠老人は一本の木剣を吊った。一丈ばかり高い枝から真田紐で吊ったので、木剣は地上から四尺ほどの空間に、切尖をほんの僅か上にして吊り下げられた。飯篠老人は丹念に吊りぐあいを調べたのち、満足そうに頷いて云った。
「そういう修業者が来たら、この木剣と立合えと云うがよい、おそらく打込むことはできない筈である」
「まじないでもしてあるだね」
飯篠老人は眼を剥いた、けれどもなにも云わなかった。
草庵は古い建物であった。何百年という昔、なにがしとやらいう高徳のひじり(聖)が巡錫して来たとき、村人たちがひじりを定住させようとして建てたものだという。すっかり荒廃していたが、大先生が住むに当って、(もちろん村人たちの手で)修理した、屋根も新しい萱で葺替えてあるし、襖、障子、壁、みなきれいに直してあった。此処は湯小屋のある三つ沢を、右まわりに十五町ばかり登って来た台地で、二百坪たらずある前庭のさきは、谷へきれる断崖。うしろには山の中腹が迫っている。