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Japanische Klassiker mit Furigana

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えせものがたり

似而非物語

山本 周五郎

Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme

Aozora Bunko

「はてな」といったような顔つきをすることもあった。決してむだ口はきかないし、お互いで話したり笑ったりすることもなかった。ただひとつうるさいのは、かれらが杢助から眼を放さないことであった。眼を放さないばかりでなく、かれらは全神経と全感覚とで、休みなしに杢助に付きまとい、どんな無意味な動作からも、極意をさぐり出そうとするふうであった。

五之木五郎はなかでも熱心な修業者で、飯の炊きようも上手だし、縫いつくろいだの洗濯物なども堂に入っていた。彼はかなりな吃りで、そのためもあるかもしれないが、ときどき杢助の前へ来て坐って、指を一本立てて見せる癖があった。きちんと姿勢を正し、黙って右手を前に出して、その食指だけ一本ぬっと立てるのである。それはちょうど子供が親に向って、

――飴を買うから百文お呉れ。

と云うのに似ていた。もちろん、道の秘奥をさぐるための挙動の一つなのだろうが、初めのうちはなにかこっちが術でもかけられそうな心持で、馴れるまで杢助は気骨が折れた。二之木二郎は疳持ちらしく、娘たちが来る日は、恐ろしいほど渋い顔をし、ふくれどおしにふくれていた。一之木は肥えていて、多少粗忽で、飯を炊くとよく焦がしたり、半煮にしたりするが、ほかに取立てていう特徴はなかった。