Japanische Klassiker mit Furigana
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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
Lesen Sie 似而非物語 (えせものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.817 Zeichen · 64 Bildschirme
「先生おみごとです、おみごとでござります」
杢助の発作は頂点に達し、したがって恢復し始めていた。彼は耳を聾する歓声を聞きながら、ぼんやりと心のなかで呟いた。
――やっぱり思ったとおりだ、なにかが起こったにちげえねえ、なにかが、……災難はのがれただ。
杢助は領主の前に呼ばれて褒美を賜わった。暫く城中の客になるようにといわれ、連日にわたって豪奢な饗応を受けた。大豪傑は(首をくれずに)逃亡した、杢助は金沢城を救ったのであった。評判はたちまちのうちに、ひろく領内にひろまっていった。
三日めの午後、一人の老人が金沢城の大手門の前に立った。大手の門の門番のところへ来て、右手に自然木の杖を持っていたが、その杖を大地に突いて云った。
「自分は飯篠長威斎である、御領主、加賀守侯に面会したい、早速そう取次ぐように」
「なんだって、飯篠なんというって」
「飯篠長威斎、山城守直家である」
「おい、妙な気違いが来たぞ」
門番の侍は同僚に向って云った。
「こいつ飯篠長威斎だとよ、先生の評判を聞いて気でも狂ったんだろう」
「いや自分は狂気はしない」
老人は云った。
「そのほうの申す評判を聞いたからまいったのだ、自分が正真正銘の長威斎、城中にいるのはくる眼の杢助というにせ者である」