Japanische Klassiker mit Furigana
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げんろくじゅうさんねん
元禄十三年
林 不忘
Lesen Sie 元禄十三年 (げんろくじゅうさんねん) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.586 Zeichen · 42 Bildschirme
同時に、吉良が気の毒のような感情も、ふっと横切ったりした。
糸重は、泣いていた。
吉良が、いつになくやさしく、
「何を泣く――?」
一寸逃れを、いわなければならなかった。
「ほしいものがございます。それさえ下されましたら――。」
「ほほう、物が欲しい。」吉良は、にこにこして、「子供よのう。必ずともに寵愛いたす――との証拠にな。面白いぞ。して何が所望じゃ。」
とっさの思いつきに、困って、
「あの――。」
と、部屋中を走った糸重の視線は、違い棚の扇箱にとまった。
「あれか。はっはっは、あの扇箱か。」
糸重は、あわてた。
「はい――いえ、あれに、扇をお入れ下さいまして――そうして、その扇に、ちょっと好みがございます。」
ほっとして、いった。
三
「骨は――と、木を用いて、変り材のごとく観すること、か。厄介なことを思いつきやがったなあ!」
職人のひとり言だった。
吉良からの注文書を置くと、すぐ、奇科百種新述と標題のある工学書を参考して、
「ええと、何だって?――木地を塗りて玳瑁あるいは大理石の観をなさしむる法、とくらあ。まず材をよく磨きてのち、鉛丹に膠水、または尋常の荏油仮漆を和せたる、黄赤にしてたいまい色をなすところの元料を塗る。