Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりとかぜとゆめ
光と風と夢
Lesen Sie 光と風と夢 (ひかりとかぜとゆめ) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.032 Zeichen · 158 Bildschirme
塀は間もなく切れて、向うをのぞくと、ずっと遠くに街灯が一つ、ひどく小さく、遠眼鏡で見た位に、ハッキリと見える。そこは、やや広い往来で、道の片側には、今の塀の続きが連なり、その上に覗き出した木の茂みが、下から薄い光を受けながら、ざわざわ風に鳴っている。何ということなしに、私は、其の通を少し行って左へ曲れば、ヘリオット・ロウ(自分が少年期を過したエディンバラの)の我が家に帰れるように考えていた。再びアピアということを忘れ、故郷の街にいる積りになっていたらしい。暫く光に向って進んで行く中に、ひょいと、しかし今度は確かに眼が覚めた。そうだ。アピアだぞ、此処は。――すると、鈍い光に照らされた往来の白い埃や、自分の靴の汚れにもハッキリ気が付いた。ここはアピア市で、自分は今フンク氏の家からホテル迄歩いて行く途中で、…………と、其処で、やっと完全に私は意識を取戻したのだ。
大脳の組織の何処かに間隙でも出来ていたような気がする。酔っただけで倒れたのではないような気がする。
或いは、こんな変な事を詳しく書留めて置こうとすること自体が、既に幾分病的なのかも知れない。
八月×日