Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりとかぜとゆめ
光と風と夢
Lesen Sie 光と風と夢 (ひかりとかぜとゆめ) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.032 Zeichen · 158 Bildschirme
夕方六時頃、馬で裏の丘を下りようとした時、前面の森の上に大きな雲を見た。それは、甲虫の如き額をした・鼻の長い男の横顔をはっきり現していた。顔の肉に当る部分は絶妙の桃色で、帽子(大きなカラマク人の帽子)、髭、眉毛は青がかった灰色。子供じみた此の図柄と、色の鮮明さと、そのスケールの大きさ(全く途方もない大きさ)とが、私を茫然とさせた。見ている中に表情が変った。たしかに片眼を閉じ、顎を引く様子である。突然、鉛色の肩が前にせり出して、顔を消して了った。
私は他の雲々を見た。はっと思わず息をのむばかりの・壮大な・明るい・雲の巨柱の林立。それ等の脚は水平線から立上り、其の頂きは天頂距離三十度以内にあった。何という崇高さだったろう! 下の方は氷河の陰翳の如く、上に行くにつれ、暗い藍から曇った乳白に至る迄の微妙な色彩変化のあらゆる段階を見せている。背後の空は、既に迫る夜のために豊かにされ又暗くされた青一色。その底に動く藍紫色の・なまめかしいばかりに深々とした艶と翳。丘は、はや日没の影を漂わせているのに、巨大な雲の頂上は、白日の如き光に映え、火の如く・宝石の如き・最も華やかな柔かい明るさを以て、世界を明るくしている。