Japanische Klassiker mit Furigana
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にゅうえいぜんご
入営前後
黒島 伝治
Lesen Sie 入営前後 (にゅうえいぜんご) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.353 Zeichen · 5 Bildschirme
うるおいのない窓、黒くすゝけた天井、太い柱、窮屈な軍服、それ等のものすべてが私に、冷たく、陰鬱に感じられた。この陰鬱なところから、私はぬけ出ることが出来ないのだ。
軍服に着かえると、家から持って来たものを纒めて、私は外へ持って出た。
呼出されるのを待つため、練兵場に並んだ時、送って来た者は入営する者の傍に来ることが出来ないので親爺と別れた。それから、私がこちらの中隊へ来ることを、親爺に云うひまがなかった。各中隊へ分れて行く者の群が雑沓していた。送って来た者は、どちらにいるか、私は左右を振りかえってよく見たのだが、親爺は見つからなかった。それが、私が着物を纒めて中隊の前へ出て行くと、そこに、手提げ籠をさげた親爺が立っていた。
私は黙って、纒めたものを親爺に渡した。親爺は、それを籠の中へ押し込んだ。私は暫らく何も云わずに親爺の傍に立っていた。何故か泣けてきて、涙が出だした。
親爺は、私が泣いているのを見た。しかし何とも云わなかった。何かを云いだすと却って、私を泣かせると思ったのだろう。
三
入営してから、一週間ばかりが、実に長かった。一カ月いや、二カ月にも値した。