Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
取次ぎに出た若い女――それは娘のお露であったが、そのお露の姿を見ると、彼の心は波立った。
「美しいな」と思ったからである。しかしそれとて軽い意味なので、一眼惚れと云うようなそんなところまでは行っていない。
一旦引っ込んだその娘が再びしとやかに現われた時、また「美しいな」と思ったものである。
お露は夜眼にも知れるほど顔を赧らめもじもじしたが、
「むさくるしい処ではございますが、なにとぞお通りくださいますよう」
「ご免」と云うと葉之助は、刀を提げて玄関を上がる。
間ごと間ごとを打ち通り、奥まった部屋の前へ出たが、飾り立てた部屋部屋の様子、部屋を繋いだ廻廊の態、まことに善美を尽くしたもので、士太夫の邸と云ったところでこれまでであろうと思われた。それにも拘らず邸内が陰森として物寂しく、間ごとに点された燭台の灯も薄茫然と輪を描き、光の届かぬ隅々には眼も鼻もない妖怪が声を立てずに笑っていそうであり、人は沢山にいるらしいが暖かい人気を感じない。
「妖怪邸と云われるだけあって、不思議に寂しい邸ではある」
こう心で呟いた時、お露がスーと襖を開けた。
「父の病室にござります」