Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
眼にも止まらぬ早業である。声一つ敵に立てさせない。
ブルッと血顫いした葉之助、そのまま前庭を突っ切ると、正面に立っている古代造り、久田の姥の住む館へ、飛燕のように飛び込んで行った。
階段を上がると廻廊で、突き当たりは杉の大戸、手を掛けて引き開けると灯火のない闇の部屋、そこを通って奥へ行く。と、一つの部屋を隔てて仄かに灯影が射して来た。
窺い寄った葉之助、立ててある几帳の垂れ布の隙から、内の様子を覗いて見たが、思わずゾッと総毛立った。
艶かな色の大振り袖、燃え立つばかりの緋の扱帯、刺繍をちりばめた錦の帯、姿は妖嬌たる娘ではあるが頭を見れば銀の白髪、顔を見れば縦横の皺、百歳過ぎた古老婆が、一人の武士を抱き介えている。他ならぬ若殿頼正で、死に瀕した窶れた顔、額の色は藍のように蒼く唇の色は土気を含み、昏々として眠っている。
老婆は口をカッと開けたがホーッ、ホーッ、ホーッ、ホーッと、頼正公の顔の辺へ息をしきりに吹きかける。そのつど頼正は身悶えする。
じっと見定めた葉之助は、几帳をパッと蹴退けるや、ヒラリと内へ躍り込んだ。
ピタリと槍を構えたものである。
さすがに老婆も驚いたが、抱いていた頼正を投げ出すと、スックとばかり立ち上がつた。