Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「死んでもよい」という感情が、人の心へ起こるのは、実にこういう瞬間である。
と、葉之助の一方の手が、やさしくお露の顎にかかった。しずかに顔を持ち上げようとする彼女の顔は手に連れて、穏しく上へ持ち上げられ、情熱に燃えた四つの眼が互いに相手を貪り見た。次第次第に葉之助の顔がお露の顔へ落ちて行った。お露は歓喜に戦慄した。彼女は唇をポッと開け、そこへ当然落ちかかるべき恋人の唇を待ち構えた。
母屋の方から人声はしたが、こっちへ人の来る気配はない。二人は文字通り二人きりであった。すぐに来るのだ恋の約束が!
とたんに嗄れた女の声が、二人の身近から聞こえて来た。「畜生道! 畜生道!」それはこういう声であった。
ハッと驚いた葉之助は、無慈悲に抱いていた手を放した。
素早く四辺を見廻したがそれらしい人の影も見えない。
「はてな?」と彼は呟いたが、やにわに袖を捲り上げた。歯形のあるべきこの腕に、二十枚の歯形は影もなく、それより恐ろしい女の顔が、眼を見開き唇を歪め嘲笑うように現われていた。
「人面疽」
と叫ぶと一緒に、葉之助は小柄を引き抜いたが、グッとその顔へ突き通した。飛び散る血汐、焼けるような痛み、それと同時に人顔は消え二十枚の歯形が現われた。