Japanische Klassiker mit Furigana
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れつのこころ
列のこころ
宮本 百合子
Lesen Sie 列のこころ (れつのこころ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.148 Zeichen · 11 Bildschirme
このごろはどこへ行っても列がある。列に立ってバスにのって用達しに出かけて昼ごろになり、日比谷の公会堂のよこの更科を通りかかったら、青々と蔦をからめた目かくしをあふれてどっさり順番を待っている人々の列があった。この小さい蕎麦店の入口はバスの入口のようにたった一つではなくていかにも公園のなかの店らしくからりと三方あいているし、テーブルはいくつもあるから、列も単純な一列ではなく、うち見たところテーブルに向って今や盛に蕎麦を箸にすくい上げてはチューチューと喉へすべり込ましている人々の背中へつめかけて、ぎっしりと犇めきよせて順を待っている。一人が椅子から腰を浮かすや否や、背後に待機していた人が極めて敏捷に、そのあとへ坐る。立った人の脚の片方がまだ椅子のところからどききらないうち、もう新手のひとの片脚はその片脚のわきに来ている。その位のすばしこさである。大抵のひとが上着をぬいだ姿である。帽子なしで、何とも云えないくさくさしたような気の立ったような顔つきで、蕎麦のたれの匂いの漂った店の内外に溢れている。
力仕事をするひとたちは、この頃五度ぐらい食べないとやれないそうだ。