Japanische Klassiker mit Furigana
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わかれたるつまにおくるてがみ
別れたる妻に送る手紙
近松 秋江
Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme
と、たしなめたしなめした。本当に、自分は、今に、もっと良いことがある、今に、もっと良いことがある、と夢ばかり見ていた。けれども、私を空想家だ空想家だと言った、あのお雪が矢張り空想勝ちな人間であった。「今にあなたが良くなるだろう、今に良くなるだろう、と思っていても何時まで経っても良くならないのだもの。」と、あの晩彼女が言ったことは、自分でも熟とそう思ったからであろうが、私には、あゝ言ったあの調子が悲哀なように思われて、何時までも忘れられない。彼女も私と一緒に、自分の福運を只夢を見ていたのだ。私は遂々其の夢を本当にしてやることが出来なかった。七年の長い間のことを、今では、さも、詰らない夢を見て年齢ばかり取って了った、と、恨んで居るであろう。年々ひどく顔の皺を気にしては、
「私の眼の下の此の皺は、あなたが拵えたのだ。私は此の皺だけは恨みがある。……これは、あの音羽にいた時分に、あんまり貧乏の苦労をさせられたお蔭で出来たんだ。」
と、二三年来、鏡を見ると、時々それを言っていた。……そんなことを思いながら、フッと庭に目を遣ると、杉垣の傍の、笹混りの草の葉が、既う紅葉するのは、して、何時か末枯れて了っている中に、ひょろ/\ッと、身長ばかり伸びて、勢の無いコスモスが三四本わびしそうに咲き遅れている。