Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅういちやぎさぶろうをかたる
十一谷義三郎を語る
豊島 与志雄
Lesen Sie 十一谷義三郎を語る (じゅういちやぎさぶろうをかたる) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.959 Zeichen · 10 Bildschirme
を書いた後で、文名隆々たる頃だった。然るに、後になって「昭和三年――この年、しきりに死を念う。」と自身で書いたので、私は唖然とした。何故に酒に親しみ、あの料理屋に入りびたっていたか、そして何故にしきりに死を念っていたか、私には遂に分らずに終った。そして昭和五年に十一谷君は春子夫人と結婚したのだった。
一体十一谷君は、心境や身辺のことは一人胸に秘めて、親しい友にも殆んど洩さなかった。四年前、京橋際のビルディングの一室を借りて、好日書院という特殊出版を初めた時でも、私など一言の相談も受けず、更に驚いたことには夫人へも一言の相談もなく、みな事後報告に過ぎなかったのである。この書院を始めたのは、高木文氏の貴重な研究を世に出すのを主眼とし、三四の親しい後輩に職場を拵えてやるのが目的だったらしいが、「瀟湘八景絵の伝来と考察」其他二三の書物を出したきりで、みごとにそして当然失敗してしまった。其時の負債が前々からの負債と重って、ひどく困窮していたらしい。そんなことは私によく分らなかったものだから、まだ同書院をやってた当時、十一谷君が私の困窮を見て、私の負債整理に尽力してくれた頃、「とにかくお互に有無相通じて急場をきりぬけよう。