Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅうはちじのおんがくよく
十八時の音楽浴
海野 十三
Lesen Sie 十八時の音楽浴 (じゅうはちじのおんがくよく) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.941 Zeichen · 210 Bildschirme
その夜更けの午前一時。
医学生吹矢隆二は、ようやく八日目に、自宅の前に帰ってきた。
彼はおもはゆく、入口の錠前に鍵をさした。
(すこし遊びすぎたなあ。生きている腸――そうだチコという名をつけてやったっけ。チコはまだ生きているかしら。なあに死んでもいいや。とにかく世界の医学者に腰をぬかさせるくらいの論文資料は、もう十分に集まっているからなあ)
彼は、入ロの鍵をはずした。
そして扉をひらいて中に入った。
ぷーんと黴くさい匂いが、鼻をうった。それにまじって、なんだか女の体臭のようなものがしたと思った。
(おかしいな)
室内は真暗だった。
彼は手さぐりで、壁のスイッチをひねった。
ぱっと明りがついた。
彼は眩しそうな眼で、室内を見まわした。
チコの姿は、テーブルの上にもなかった。
(おや、チコは死んだのか。それとも隙間から往来へ逃げ出したのかしら)
と思ったが、ふと気がついて、出かけるときにチコのために作っておいた砂糖水のガラス鉢に眼をやった。
ガラス鉢の中には、砂糖水がまだ半分も残っていた。彼は愕きの声をあげた。
「あれっ、今ごろは砂糖水がもうすっかりからになっていると思ったのに――チコのやつどうしやがったかな」