Japanische Klassiker mit Furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme
磔柱を後ろに、ヨハネ原主水は太く逞しき裸馬に乗ったまま「長の牢問いに指は断たれ足は萎えた、が、未来を助かる道を得たれば憂うる心は聊も無い、今は天国に行く喜びに溢れて、基督の為に死ぬ時ぞ、これぞ我が勝利、我が幸福――」と声高らかに演舌しました。
続いて、能弁の聞え高き遠藤シモンの演舌は、見物の群衆をすっかり熱狂させ、「私も信者だ」「俺も信者だ」「一緒に処刑して貰おう」と押し寄せた人数だけでも三百余名、さすが警固の武士達も、色を失ってこれを阻止しました。この上邪宗徒の数を増しては、新将軍家光の怒の程も恐ろしかったのです。
時を移さず、五十基の磔柱は、順々に火をかけられました。山と積まれた薪が焔々として燃え上ると、天主に献ぐる祈の声、サンタ・マリの讃歌は熱風を裂いて天にも届けと響き渡ります。
その時、
「待って下さい、違った人が一人交りました、あの人を助けて下さい」
何う潜りこんだか、竹矢来を越えて飛込んだ一人の美女、五十基の磔柱の、まだ火を掛けない最後の一本に縋りつくと、髪を振り乱して、かき口説くのでした。
「これ、何をする、退れ」
飛込んで来た役人、柱から引離そうとしましたが、蛇の如く絡みついて、男の力でも何うすることも出来ません。