Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

(こゝで死んじゃあならねえ)

何んだか、身体が冷たくなって行くようであった。疵口だけが、万力で、締めつけられているように痛んだ。

(お天道様の出ないうちに、ここから、逃げ出さなくちゃあ――)

男達の怒鳴る声、荒い足音は、すっかり無くなって、女中が、寝間着のままで、時々、うろついて出て来るだけになった。

(今の間だ)

庄吉は、炭俵へ指を突っ込んで、炭の粉を、鼻の下へ、頤へ、なすりつけた。そして、立上ると、少し、頭がふらつくようで、一寸よろめいた。そして、暫く炭俵を掴んで突っ立っていた。斬り落された腕が、懐の中で、突っ張っているので

(寺子屋じゃあねえが、松王丸の倅は、お役に立ったぞよだ)

と、書類を、死んだ腕から取上げて、腕を捨てて行こうと――小腕の指を披げようとしたが、書類を固く握りしめたまま、左手の指だけの力では、開かなかった。

(一心凝めて握ってやがらあ)

と、思うと、死んだ、自分の子が、大事な宝を握りしめているようで、我子のようなその腕から、書類だけを取って、その腕を捨てて行く気にはなれなかった。

庄吉は、少しずつ出てみた。誰も居なかった。だが、いつ、何処から、誰が、出て来るか判らなかった。