Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
そして、眉をゆがめ、肩で呼吸をしながら、小さい流れの方へ、身体を引きずった。
蹲もうとすると、膝頭が、痛んで、曲らなかった。太腿へ、両手を当てて、少しずつ、蹲みながら、前へ転びそうになるのを支えて、暫く、そのまま眼を閉じていた。
(もう、追手に見つかって殺されてもいい。殺された方がいい。何れは、死ぬ――水を飲むと死ぬというが、死んだ方がいい)
というようなことが、頭の中で、ちらちらした小太郎は、疵所の痛みと、深さとに、すっかり疲労してしまって、それ以外のことは、考えられなくなっていた。
(水だ、水だ)
眼を開いて、手と、身体とを、前へ延すと、よろめいた。そして、片膝つくと、倒れてしまった。
(もう、動けない)
暫く、そのままでいた。水の音と、風が葉末を渡るほか何も聞えないし、水の白く光っているほか、何も見えなかった。左手で、草をさぐり、水辺の近いのが判ると、草を掴んで、身体を、水の方へずらした。そして、右手で、水を掬って、掌の凹みから飲んだ。一口飲むと、つづけさまに、飲んだ。
水は、水の味でなく、慰めと、薬と、この上ない甘い味とをもったもののように感じられた。