Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
そして、時々呻いた。
綱手は、そっと手を額へ当てた。熱かった。汚い、白い蒲団、汚い、白い着物。陰気な部屋。それは、自分達一家の宿命の色のように、しみじみと、悲しく、淋しく、綱手の胸をしめつけた。そうした色彩の中に、医者でもない僧侶に、看護されて、こうしている小太郎は、もう生き返らぬ人のように思えた。
「明日になれば、熱も下って、人心地がつこう」
義観が、土鍋のところから、声をかけた。
「山は寒いで、熱には毒じゃが、疵にはよい」
「いろいろと、お世話下されまして、忝のう存じまする」
綱手は、小太郎の側から、礼を云った。
「今夜は、この下の寺で泊って、明日、病人と、口を利いて戻るがよい」
「はい」
「父御の墓参りもするかの」
「はい、その、お墓は――」
「一寸、降ったところにある、案内しよう」
義観は立上った。綱手は、自分の家の出来事でなく、他人の世界の出来事を見ているような気がした。一月程の内に、江戸の長屋から追い出され、道中、父の死、兄の病――自分の生きているこの世の中の出来事として、その一つ一つを、はっきりと、感じる暇もなく――感じるにしては余りに大きく、深く、悲しいことが、引っきりなしに起って来たので、頭がぼんやりしてしまっていた。