Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
小藤次は、藩中一の暴れ者に対して、心の中では脅えていたが、のめのめ引きさがるのは口惜しいし、深雪を手渡すのは、それよりも惜しいし、見ている人々の手前も、このままでは済ませなかった。頭が、じんじん熱くなって来て
(この野郎、何うしてくれよう)
と、叫んでいたが、手は出せなかった。出したくて耐えきれぬまでに、憤りと、口惜しさとが、こみ上げていたが
(うっかり手出しはできぬ)
と、思ってもいた。
「人の女を、畜生っ――喜平っ、一っ走りして、手を借りて来い」
「ようがす」
小者は、益満を睨んで、脇差を押えて、邸の方へ、走って行った。
「旦那、駕は、何うなりますんで――」
駕屋が、小藤次に、無頼漢らしい物のいい方をした。
「黙れっ」
「黙れって、呼んでおいて、旦那」
駕屋は、小藤次の口の利き方で、怪しい侍と考えたらしかった。
「小藤次、乗って参ればよいではないか、遠慮せずに――大身の身じゃ。拙者共は、歩いて参る」
「喧しいやい――深雪、おのれ、益満と行く気か」
深雪は、益満の背後から、顔も出さなかった。
「約束を破るのか」
「旦那、駕は、一体――」
「この、獣っ、黙って引込んでろ。