Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

「兄様――それから、路銀は?」

「路銀? 持っておるぞ、腹巻に入ったままであるし、義観和尚から、五両もろうた」

「妾も――」

綱手は、小さい包を出して

「都合して参りました。旅には、何程あっても入用なものゆえ――」

と、小太郎の前へ、差出すと共に、胸がつまった。

「いいや――有難いが、お前が持っている方がよい。わしは、何んとかする。お前は、女で一人じゃ。まして、敵の中にいて――収めておくがよい」

小太郎の、綱手を、信じていて、可愛がってくれているのが、綱手には、悲しかった。

(兄は、何も知らない。自分のしたことを、考えていることを、何も知らない。自分は兄を欺いているのに、兄は、自分を昔のように可愛がっていてくれる)

と、思うと、涙が滲み出てきた。

「何を泣く、泣いて戻る父か――」

「ええ?――泣く?」

綱手は、固い笑を、脣へ上げて

「ふっとして――」

と、一言いったが、胸の中は、涙でいっぱいであった。

「邸は、時刻が、厳しかろう。戻ってよいぞ。調所が死んだのでは、最早、邸におることもないが、母上と相談して、すぐに、又蔵にでも迎えに来てもらうよう、飛脚を立てよう。無事なのが、何より――」