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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、船は、八軒家か、高麗橋へ着くし、そこには宿屋が並んでいるのを、綱手は知らなかった。

「従いて参るなりと、別れるなりと――」

月丸の足が、早くなった。綱手は、月丸の袖を掴んだ。

「御存じの上は――」

と、いって、声がつまってしまった。月丸は、袖を、二三度払って、綱手が、放さないので立止まった。

「見っともない」

綱手は、涙の流れるままの顔で、月丸を見た。そして

「御案内――致します」

涙に、曇った声であった。

「綱手、お互に、苦しいのは、一緒であるぞ」

綱手は、人通りの無いのを見て、月丸の胸へ縋って、顔を押伏せた。月丸は、綱手の肩から、背を抱きながら

「泣くな」

と、云った。そして、じっと、肩を波立たせて泣き入っている綱手を見下ろして、じっと、笑った。手だけは、しかし、抱きしめていた。

小太郎は、延べさせておいた床を、片隅へ押しやらせて、月丸を招じた。そして、床の間の後方に、いつでも、刀を取れるように坐った。

月丸は、わざと、刀の柄を、後方右手に置いて、害心の無いことを示してから

「深夜に、御手数を相掛け、済まぬ儀でござる。申し上げましたる如く、当蔵屋敷詰、無役、百城月丸と申しまする」