Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
深雪の背を突くようにして、せき立てた。
「――形を、見極めもしませずに、話のできることではござりませぬが、確かに、この眼で見たにちがいござりませぬ。急に、御部屋の中が暗くなりまして――齢の頃なら四十余り、その面影が、牧仲太郎様に、似ておりましたが――」
「牧殿は三十七八じゃ」
綱手が、小太郎の後方から入って来た。そして、いっぱいに涙をためた眼で、八郎太を見ながら、両手をついた。
「お父様」
八郎太は、綱手に、見向きもしないで
「七瀬、予て、申しつけておいた通り、勤め方の後始末を取急いで片付け、すぐ、国へ戻れ。許しのあるまで、二度と、この敷居を跨ぐな」
「はい」
「お父様」
綱手は、泣声になった
「お母様に――お母様に――」
「お前の知ったことでない、あちらへ行っておいで」
「いいえ、妾は――」
「それから、手廻りの品々は、船便で届けてやる。早々に退散して、人目にかからぬように致せ」
罪のない妻を、こうして冷酷に扱うということが、武士の意地だと、八郎太には思えた。この恩愛の別離の悲嘆を、こらえることが、武士らしい態度だと、信じていた。
又、妻をこう処分して、武士らしい節義を見せるほか、この泰平の折に、忠義らしい士の態度を示すことは、外になかった。