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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

小太郎は、刀を、草の上に置いて、牧の顔の前に膝をついた。そして、合掌して、称名した。

夕陽が、大阪の先へ落ちようとして、海も、空も、真赤に――だが、山の上の雲の下だけは、牧の顔のように、どす黒い色をして、ひろがっていた。

小太郎は、脇差を抜いて、牧の頸の下へ差込んだ。そして、膝で、肩口を押え、左手で、髻を掴んで、ぐっと、引上げた。草へ、音を立ててかかるべき血が、切口から力なく流れただけであった。だが、切り放たれた重い頭は、小太郎の手から、落ちようとした。

(わしの仕事は、これで済んだ。然し、これが、わしの仕事であったのかしら?――こういう仕事が――)

益満の言葉が、頭の中いっぱいになって来た。小太郎は、牧の片袖を切裂いて、首を包んだ。自分の刀を、脇差を拭って、収めた。そして、立上ると、山内の倒れているところへ行って、その袴を脱せた。それを、持って戻って来て、牧の首の切口へ被せ、手を、足を、包んで、もう一度、合掌した。

何かしら、自分の身体の中いっぱいになっていたものが、訳もなく、張合もなく、すっと、抜け出てしまったように感じた。頭の中も、身体の中も、空虚になってしまった。