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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

空に帰したがために、頭の中が、抜殻のように――

(只事の馬ではない)

と、感じても、立とうとも、思わなかった。

(何うにでもなるがいい)

と、いうような気持さえ持って、黙ったまま、坐ったままでいた。門が、軋った。すぐ、廊下へ、足音が、響いてきた。見張の者が、すぐ通した人なら、大したことではない――

(誰であろう?――何をしに)

と、人々が、振向いたり、感じたりした時

「吉之助、吉之助、居るかっ」

それは、西郷吉兵衛の声であった。

「居ります」

廊下の板戸が、開くと、吉兵衛が、鞭を持って

「お上が、お危い。お前、お庭先へ廻って、お暇乞いせいと、今、石見様から、お使が見えた。馬ですぐ――」

と、いって、鞭を出した。又、馬の蹄の音が――門で、誰かの叫びが――

「一蔵っ」

「岩下様、旦那様っ――」

座敷中の人々は、一斉に、顔色を変えて立上った。吉之助は、真赤な顔をして

「皆つづけ」

と、叫ぶと、廊下を走り出した。

「火急の用事でござります。樺山様っ」

門前から、庭から、人々を呼ぶ声が、起ってきた。人々は、刀を、周章てて、争って、取ると、誰も、眼を光らせて、誰も、怒ったように沈黙して、狭い廊下から、襖を叩き開けて、庭へ飛び降りて、走り出した。